2015.11.13(金)

小犬陛下と饅頭屋 2ー2

【王宮 執務室】

陛下が戻られたら目を通して貰わねば…と、書簡の束を携えた李順が執務室の扉を開けると、そこには真面目に机に向かう黎翔の姿があった。
驚いて書簡を落としそうになったが、何とか持ちなおし直ぐに扉を閉めた。

「陛下…!一体何処へ行ってたんですか!?
それと、お戻りになられたなら、きちんと私にご報告下さいっ!!」

「…ごめんごめん。次からはそうする。」
「『次』など御座いませんっ!!」

李順は余り反省してなさそうな黎翔の言葉を撥ね付ける様に言い放った。
もっと…もっっと言いたい事はある!
書簡を握り締め、小言を言いだしそうになるのを堪える。
…とはいえ、思いの外早く帰って来たものだ。昨日のあの様子だと、夜までは戻って来ないかと思っていたのに…。

李順は窓から空を見上げた。
昼は過ぎたがまだこれから始まる協議には間に合う。
「それでは、協議の時間迄に何か軽食を御用意致しましょう。」
急いで準備をしようとする李順を引き止めた。
「食事は良い。それより、その間に方淵からの報告書と王都関連の案件の年間計画書をもう一度読み直したい。此方に持って来てくれ。
…後、今夜はちゃんと妃の所に行く様にするよ。」

李順の目が丸くなる。
「…何?」
「陛下、何か変なモノでも食べましたか?」
「…どういう意味だ。」

「いえ、気分転換が出来て大変ようございました。では、先ず報告書をお持ちするので暫くお待ち下さい。」
機嫌良く退室する李順を眺めながら、ふと先程下町で食べた饅頭の味を思い出した。

「…とっても美味しいお饅頭なら食べたけど。」

明るく元気な饅頭屋の娘だった。
その娘の優しさに触れ、真面目に働く姿を見て、何だか自分も頑張ろうと思えたのだ。

黎翔は満足気に微笑むと、李順が戻って来るまでに…と、机の上に置かれていた昼からの協議用の資料に目を通し始めた。
│posted at 22:23:06│ コメント 0件
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