2015.11.13(金)

小犬陛下と饅頭屋 2ー3

《それぞれの日々》


夕鈴は持ち前の交渉術と勢いで飯屋の主人の許可を貰い、少しずつ作る饅頭の数を増やした。

どんなに同じ様に作っても女将の饅頭と全く同じ味にはならない。それでも常連のお爺ちゃん達に、段々女将の味に近付いて来てるよと褒められる様になってきて、夕鈴も更にやる気が出た。
明るい夕鈴の接客も好評で、饅頭屋の女将が休んで離れていた他の常連も徐々に戻って来ている。
それに加え、几鍔がさりげなく的確なアドバイスをするお陰で、夕鈴は確実に売り上げを伸ばしていった。



「あら、几鍔どうしたの?」
いつも饅頭屋バイトが終わるまでは姿を見せない几鍔が開店中に現れた。

「んー、ちょっと気になる事があってな。」
そういうと、勝手に店の椅子に腰を下ろす。
「お茶。」
「…はいはい。」
ぶっきら棒な幼馴染に仕方なくお茶を淹れてやる。

「昨日の深夜にこの向こうにある小間物屋の主人が襲われたそうだ。…知ってたか?」
「ええ。さっき、そのご主人の親戚だっていう常連のおばあちゃんから話を聞いたわ。
何でも、金目当てなんだとか。物騒な話ねえ。
ご主人、奥さんに先立たれてからたった1人でお店を続けてたらしいのに、とってもお気の毒だわ…。」
几鍔にお茶とワケアリ饅頭を出しながら答える。
「今度は両足の骨を折る大怪我だ。…もしかすると、女将を襲った奴と同じ奴かも知れねえ。」
「そうなの!?」
几鍔は出された饅頭にかぶりつきながら頷いた。
「一か月前に金物屋の兄さんも金目当てで襲われてたらしいんだ。幸い、この兄さんは逃げる事が出来たんだが…。それで、どうもこの辺りの店の奴が狙われてるんじゃねえかって話になってな。
これ以上怪我人が出てもいけねぇから、暫くの間ウチの若い衆が朝昼晩見回りをする事になったんだ。」
「そう!じゃあ、私もお店が早く終わったら昼の見回りのお手伝いしようか?」
「…お前に何が出来るんだヨ。」
ビシッという音と共に、几鍔の手刀が夕鈴の額に直撃した。
「あいたっ!!何すんのよっ!」

「…お前はすぐ無茶しようとするんだから。
そんな事よりお茶出すとかの方がよっぽど助かんだよ。」
「ん!じゃあ、今度差し入れ持ってくわ!」
「おう。それで頼むわ。」
几鍔はニッと笑うと夕鈴の頭をガシガシ撫でた。
「ちょっ!もう!!髪がぁっ!!」

│posted at 22:32:06│ コメント 0件
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