2015.11.13(金)

小犬陛下と饅頭屋 2ー4


あの饅頭屋に行った日から、精力的に政務と夫婦演技をこなしていた黎翔だが、やはり臨時妃との時間は拷問にも思える程憂鬱なものだった。

李順に忠告されてから、目に見えたアプローチは控える様になったが、そのかわり香油の香りが一段と強くなっていった。
上品な妃専用の香油だろうと、使い過ぎると質の悪い妓館の香と大差ない。
そんな事も分からないのかこの娘は…と呆れてしまう。そしてそれを止められぬ侍女達にすら憤りを覚える。
理不尽な事だと自分でも思うが、もう限界が近くなっているのだ。

…そもそも、余り我慢は得意ではないのだから…。

そして、黎翔はもう一度李順に忠告する様に命じたのだった。


だが…妃役の趙 麗華は、自分で自分の香りがどんなに強いのか分からない程に感覚が麻痺してしまっていた。
忠告はなされたものの、中々に香の量は減らない。


ある朝、後宮から政務に向かう前にも夫婦演技を女官達に見せておこうと臨時妃を呼び出したのだが、朝も早いのにまたむせ返るほどの香が…。

……こうなったら相手に合わせて言う事を聞かせた方がまだ気が楽かも知れない。

黎翔は臨時妃の髪をするりと撫でて、その媚びる様な瞳を見つめた。
「妃よ…その香も良いが、私は君自身を…愉しみたいのだ。…たまには香の類を使わず、君のありのままを私に愛でさせて欲しい。」

そして頬に片手を添え、優しく囁く。
「…私の願いを聞いてくれるか?」
臨時妃はうっとりと蕩け切った表情を浮かべている。

「…ええっ!もちろんですわ!!」


その日から臨時妃は香油類を全く使わなくなった。



うん、暫くはコレで行こう。

…嫌だけど。
ものすご〜〜く嫌だけど…。



ああ、また下町に行きたいな。


ここ数日、下町で食べたあの饅頭の味が忘れられないでいたのだ。
…あの優しい甘さをもう一度味わいたい。


『また来てくださいね!』
饅頭屋にいた元気な娘の顔が思い浮かぶ。

お饅頭を買う約束もしてるし…。

うん、そうだな。
約束はきちんと守らないといけないよね。


……早めにね。



黎翔は朝議の後、また忽然と姿を消した。


ま…またかっ…!!

李順は隠密から伝言を聴かされ、ガックリと肩を落とした。
│posted at 22:34:33│ コメント 2件
≫コメント 
わぁ!一気に更新された( ´ ▽ ` )ノ
まとめて読めて嬉しいです♪その内続きも出来たらお願いしますね
まるねこ│URL│posted at 2015-11-20(Fri)21:34│編集
まるねこ様
お返事遅くなりました( ;´Д`)コメントありがとうございます!!
少しずつ増やして行きますのでよろしくお願いしますーー!!♪( ´▽`)
えぐち│URL│posted at 2015-11-24(Tue)07:48│編集
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