2015.12.07(月)

後宮管理人

【二次創作SS】【ずっと浩大&老師】【ほんのりダークな妄想設定有】

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『後宮管理人』



「あれ?まだそんな本選んでんの??」

後宮管理人である老師・張元が、後宮の本気を夕鈴に見せようとアレコレ夜の作法本を選んでいる時、隠密・浩大が突然現れた。

「なんじゃ、お主また菓子でもつまみにきたのか?」
「せいかーい☆」
そう返事をした次の瞬間には、卓上に用意してあった点心が、浩大の口に運ばれていた。

口を動かしながら、並べて置かれている数冊の老師厳選の作法本を片手でパラパラとめくる。
「何々……《○繕直伝房事指南書女人用 永久保存版》?
わぁ、スゲェなコレ!」
そこに置かれていたのは、どれも丁寧な描写の春画付きの本だった。
夕鈴にもちゃんと理解出来る様にとの老師の配慮だろうが、初心な夕鈴には逆効果でしかない様に思う。

「いやー、コレ露骨過ぎてお妃ちゃん卒倒するんじゃね?」
浩大はケラケラと笑いながら次々と書物を検分し、老師に問い掛けた。

「何を言うか!露骨だろうがなんだろうが、とっとと房事のイロハを知って、実践して、陛下を喜ばせて、早く元気な御子を産むのが妃の仕事じゃろーが!!
……これ位、ちゃちゃっと読んで貰わねば困るわい。」

とにかく陛下の為、御世継ぎの為じゃ!!と息巻いている老師。
そんな老師の様子を見ながら、浩大は卓の側にある小さな椅子に腰を下ろした。

「……前から言おうと思ってたんだケドさぁ。」
「ん?なんじゃ?」
「臨時の頃からお妃ちゃんに御子だ世継ぎだって連呼してるケド、前王の妃達にも御子を〜って熱心に話してた裏で、密かに堕胎薬盛ってたらしいじゃん?」
……どういう了見なワケ?と、浩大はニヤリと笑った。

「ほっほっほ。
そんな噂を鵜呑みにしておるのか?お主。」
浩大の方に向き直りもせず、老師はより詳しい挿絵のある作法本を探しながら答えた。
「……。」

「《後宮》を《管理する》のがワシの勤め。
……そんな事はしとらんわい。」
「ふーん。」

浩大はつまらなそうに頬杖をつきながら、3つ目の点心にかぶりついた。

「で、実際どうなの?」

「……何がじゃ。」
「何したの?」
そう言われて、老師はようやく浩大に目を向けた。
浩大は……いつもの様にニコニコと笑っている。

「……ほほっ。
何じゃ、今日は珍しく突っ込んでくるのぉ?」

老師は本探しを中断すると、戸棚から新しい茶器を取り出しお茶を入れ始めた。

「あの頃……ワシは本当になーんもしとらんよ?
ワシが何もせずとも、妃同士が好き勝手に争い合っとったからの。
寵妃が現れたと思えば居なくなり、妃の誰ぞが懐妊していると判るとすぐお子が流れ。
……その繰り返しじゃった。」
そう言い終わると、お茶を浩大の前に置き、じっと見つめてくる浩大に視線を合わせた。

「ここはな、小僧。
女共だけでなく、権力を握りたい者全てにとっての……戦場よ。」

しかしな、と老師は話を続ける。

「それは……どうでも良い事よ。
ここは表も裏も、ワシにとっては国王陛下の為に存在する場所じゃ。
陛下のお心を癒し、やがて王位を継ぐであろう次代の為の大事な御息所。
そして……。
その後宮にまつわる全てを把握し、表から裏までを管理する、それが『後宮管理人』じゃ。」
老師はそこまで言うと、少し前に入れてあった自分の茶を一気に飲み干した。
それを見て、浩大も老師が先程自分に入れてくれたお茶を一口飲む。

「陛下の御心が曇らぬ限り……、次代に繋がる者の命に危険が及ばぬ限り……、『何もしない』。
そういうモノじゃよ、『管理人』の仕事というのは。
……《今》も《これから》も、な。」

そう言うと、老師はニタリと嗤った。


って事は……。


浩大は僅かに眼を細めた。

「……ひでぇな。
お世継ぎ候補は護るケド、陛下の憂いとなる者や次代に繋がらないと見定めた御子や妃は……何かあっても見殺しか……『管理人』が如何にかするって事かよ。」

「……はて、何のことかのう?」

老師は自分の茶を淹れなおしながら、戯けるように答えた。

「……お妃ちゃんには例えどんな事になっても手ェ出すなよ?
もちろん、これから出来るかもしれない御子にも……ネ。」



今後……どんな事態になっても、狼陛下は彼女を守れと言うだろう。

彼女と御子を守るのは自分の役目。


老師だろうと容赦はしない。



一瞬、浩大は老師を牽制する様に鋭く睨めつけた。

「……返事は出来ぬがの。
まぁ、あの娘なら大丈夫じゃろ?」

……絶対に。

「それに、何かあったとしてもお主がおるしのぅ。」

老師はそう言うと、ほっほっほっと声を上げ楽しそうに笑った。

「ワシまだ死にたくない。」

「……ははっ」

老師の呟きを聞き、浩大は先程とは打って変わって人懐っこい笑みを浮かべた。

「ま、それもそうだな〜〜。」

「……さぁて、今日はどの本を薦めてみようかのう〜?」
「もう、やめなって〜〜。
また陛下の機嫌が悪くなるんだからさ〜〜。」

それから暫くの間、ああでもないこうでもないといった二人の賑やかな話し声が廊下にまで響いていた。



その日。


浩大の思った通り、老師厳選の夜の作法本は露骨過ぎる挿絵を見た夕鈴が泣き出す事態となった。
そして勿論の事、それを知った狼陛下は激怒。
老師は一月程後宮から姿を消す羽目になった。




どこが『後宮管理人』なんだョ……。


これでは裏どころか表の管理すら出来ないのではないだろうか。

浩大は何とも言えない心境で、管理人の居ない後宮を静かに見守ったのだった。
│posted at 13:22:55│ コメント 0件
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