2015.12.19(土)

小犬陛下と饅頭屋 3-5

《初めての『想』》


ああ、残念だ。…もっとあの娘の面白い所が見たかったのに。

そう思いながら夕鈴の後ろ姿を見送った。


バイトもあるんじゃ仕方ないな。

むしろ、誘われたからとバイトを急に休んだりせず、仕事として責任持ってきっちり勤めるというのはやはり真面目で好感が持てる。

手を繋いだだけで真っ赤になって戸惑うのも可愛らしいし面白い。
そして何より…。
凄む男達に負けず劣らず(むしろ勝ってた)の、勇ましい姿がとても良かった。

あの元気な娘といると、如何してだか自分まで元気になれるのだから不思議だ。

…恐らく毎日朝早くから夜まで、夕鈴はあの調子で元気に一生懸命働いているのだろう。
自分も、早く戻って仕事を頑張らないと…。

そう考えながらの帰り道で、大きな小間物屋を見つけた。

少し迷ったが、先程の礼になるものがあるかもしれないからと、店に立ち寄り女物の小物などを見せて貰う事にした。

贈物に出来る良い品を…と話すと、店の者が嬉々としてこれぞという高価な品物を選び出して来た。
大振りの花細工の簪の数々、べっ甲や金で出来た透かし模様の櫛、金糸銀糸で細かく編まれた様々な帯飾りなどを、これなど如何ですかと次々に勧めて来る。

しかし、どれを選べば良いのか。

せっかくの機会なのだから、喜んだ顔も見てみたい。
あの娘…夕鈴はどんな物が好みなのだろうか。
どんな物を贈れば喜んでくれるだろうか。

けれど…、さっぱり分からない。


そもそも、だ。
今まで自ら女性に何か贈ろうとした事など無かったのだから、どういった物が喜ばれるかなんて分かるはずないのだ。



結局、何も買わずに店を出た。



ちょっと…良く考えてからにしよう。


そして、少しでも早く戻って仕事をするため、足早に王宮へと向かった。
│posted at 21:47:20│ コメント 0件
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