2015.12.19(土)

小犬陛下と饅頭屋 3-6

【白陽国王宮 執務室】


「陛下っ!!」

いきなり、叫び声にも思える声と共に勢い良く部屋の扉が開く。

明らかに怒り心頭といった様子の陛下側近である李順が、礼も取らずに飛び込んで来た。

「どうした?今度はちゃんと戻って直ぐに報せたぞ。」
「そうじゃないでしょうっ!!?
隠密を撒いてまで、ホント何処に行ってるんですかっ!」
「え?ちょっとそこまで。」
「ちょ……散歩じゃないんですよッ!」
「あはは。」

「…陛下っ!
いつ戻られるのかご無事なのかと心配する、此方の身にもなって下さいっ!!」

李順は怒りの余り息切れしつつも叱り付けて来る。
ここらで謝っておかないと、延々お説教が続きそうだ。
「ごめんごめん。次からもう少し早く戻るから。」
「だから、『次』なんてもう御座いませんよっ!!!」

黎翔はえー?と言いながら、李順に一枚の書類を差し出した。
「……これは?」
「どうやら……下町に問題があるようでな。
何処も賂を渡さないと動かない奴等がいるらしい。少し調べてくれ。」

「……畏まりました。」
李順は諦め顔で溜息を吐くと、眼鏡をかけ直し書類の内容を確認し始めた。


下町の警備体制等見直しの案件と、商店の多い区での傷害事件の調査


これで…少しでも夕鈴の笑顔が増えればいいな。

黎翔は無意識に、そんな事を考えた。






ー幕間ー




夕鈴。



…夕鈴、か。



何処かで聞いた事がある気がする。


何処で何故聞いたのか。





……思い出せないのがもどかしい。







【下町 章安区 几商店所有船着場】


「夕鈴の店に不審な客が通ってる…?」

夕鈴の幼馴染である几鍔は、突然仕事場にやって来た子分達から、見廻り中に出会った不審な男の報告を受けていた。

「そうなんスよ。
道歩いてる時は深々とフード被ってる様な奴で。」
「オレ達に囲まれても平気と言うか余裕があると言うか…、とにかく何だか得体の知れねぇ男でした。」
「それにこの辺の男じゃないみたいです。夕鈴も、遠い所からわざわざ通ってる客って話してたし。」
「…ふーん。」
興奮気味の子分達とは対照的に、あまり話を聞いていないのか、几鍔は台帳を広げて積荷の確認作業をしながら、適当に相槌をうっている。

「兄貴っ!!」
「このままでいいんスか?!
もしかしたら夕鈴が…。」

几鍔の兄貴の為に…!と気合が入っている子分達が一斉に詰め寄る。
「あーもー、うるせえな!
夕鈴が何しようと誰といようと俺には関係ねぇよ!」
「そんな、…兄貴!」
「……でもまあ、確かに怪しい奴が下町ウロウロしてんのを黙って見てる訳には行かねェな。」
几鍔はそう言うと、台帳を閉じて子分達を一人一人を見据える様に見渡した。

「お前ら、次に其奴見かけたら取り敢えず俺に知らせろ。」


「はいっ!!」

│posted at 21:52:59│ コメント 0件
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