2015.12.19(土)

小犬陛下と饅頭屋 4-3

『妃への寵愛を見せつける』作戦は、黎翔のいつも以上に熱心な演技(?)のお陰で大成功となった。

謁見後、隠密を使いに出し直ぐに目当ての髪飾りを手に入れた黎翔は、夕鈴の喜ぶ顔を想像し心踊らせながら政務に励んでいた。


ああ、早くあの娘…夕鈴の喜ぶ顔が見てみたいな…。一体どんな表情を見せてくれるのか楽しみだ。

それに…食べたい食べたいと思っていたお饅頭も、結局まだ食べる事が出来てないし。
明日、行ってみようかな。


…明日ね、明日…か。


黎翔はゆっくりと政務室を見渡した。

目の前には山積みされた書簡。
そして何時になく機嫌の良い狼陛下に少し気が緩んだ官吏達…と、それを忌々しげに睨む柳 方淵。


明日あの饅頭屋に行くには……。
今日中にかなりの仕事を終わらせないといけないなぁ……。


突然、険しい顔で仕事のスピードを上げた狼陛下。

先程まで機嫌が良さそうだったのに一体何がどうなって…ッ!?
官吏達はがらりと変わった陛下の雰囲気に酷く動揺した。

「どうした?手が止まっている者がいるようだ。
……そんな暇な官吏は此処には居ない筈だが?」
その声は身震いする程に冷たく、有無を言わさぬ強い威圧感に溢れている。

何が何だかさっぱりわからない。
だが今の状態の陛下に求められた仕事は、とにかく素早くそして正確に処理しなければ、それはそれは恐ろしい叱責を受ける…かもしれない?

恐怖に取り憑かれた官吏達は、気力を振り絞り、怒涛の勢いで次々と仕事を終わらせていった。

そして夜。
政務室にはぐったりと机に突っ伏す戦い抜いた官吏達の姿があった。



【王宮 執務室】

「陛下、熱心に仕事に打ち込まれるのは大変素晴らしい事です。
ですが、もう少し手加減されませんと…。」
政務室の惨状を見かねた李順は、少し様子の違う黎翔を怪訝そうに見つめた。

普段からデスクワークを嫌っている黎翔。
なのに今日はきみが悪いほど精力的に政務をこなしていた。
今は…いつもと変わらない様に思えるのだが。

「…まあ、とにかく今日の様な進め方をしますと、いずれ官吏達が皆倒れますよ?」
李順の言葉に、書簡に目を通していた黎翔が顔を上げ口元を緩めた。
「…政務が滞り気味だったのでな。
フン、普段からもっと気合いを入れて仕事をしておけば良かったんだよ。」

…そうしたら、今日贈り物を渡しに行けたかもしれないのに。

│posted at 22:14:31│ コメント 0件
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