2015.12.24(木)

小犬陛下と饅頭屋 5-3

「じゃあ、ひと段落ついたら休憩にしますから、それまでもう少し待ってて下さいね!」

店に戻ると、夕鈴は二度目の蒸し工程の準備を始めた。

朝からずっと働いている彼女を、自分が手伝える事があれば手伝って早めに休憩させてあげたい……。

そう思った李翔は、何かにつけて手伝いを申し出た。

「何か手伝おうか?」
「それ運ぼうか?」
「重いでしょう?持っててあげるよ??」

夕鈴はそれをいちいち断わっていたが、とうとう李翔が釜戸の蒸し器に手を伸ばした時……。


「素手で触ると危ないでしょッ!!
いいからじっと座って待ってなさいッ!!!」

思わず李翔の手を払いのけ、叱りつけた!


ああぁっ!しまった……!!
ついうっかりお客様の手を……!!!


どうしよう!と思った途端。

「……はーい。」
頬を赤らめつつ素直に引き下がる李翔。


何がどうなったのか分からないが、李翔はニコニコと大人しく椅子に座った。

「い…良い子にしてて…下さいね?」
「うん。」

何だか分からないけどゴキゲンな間に作っちゃおう……。
夕鈴は今の内とばかりに、急いで饅頭を作る事に専念した。



「お待たせしました、李翔さん。
休憩にしましょうね!」

漸く作業がひと段落したので、李翔に声を掛けながらお茶の準備を始めた。

「じゃあ、ちょっといいかな?」
「何ですか?」

李翔は咳払いをしながら夕鈴の方へ向き直る。

「お嬢さん。…お饅頭を1つ下さいな。」

夕鈴はキョトンとなったが、すぐに李翔の意図に気がつき……。

「はい!ただいまッ!!」

気合いの入った全力営業スマイル。
李翔にはそれが一段と輝いて見えた。


丁寧に包んだ饅頭を渡して、代金を受け取る。

「コレでやっとちゃんとしたお客様だ。」
「そう言えばそうでしたね!」

2人で前回のやり取りを思い出し、笑い合った。


ようやく。
食べたい食べたいと思っていた饅頭を食べられる……。

夕鈴が見守る中、一口、遠慮がちに頬張る。
あの時同様、優しい甘さがじんわりと広がって行く。

「うん、美味しい……!」
「ふふっ、良かった!!」

少し頬を染めてはにかむ夕鈴。
その仕草がなんとも可愛らしい。


「あの……。折角だから、さっき貰った肉団子も食べようか。」
「あ、ではちょっと待ってて下さいね?」
夕鈴がいそいそと2人分の取り皿を準備する間も、李翔は饅頭をゆっくり大事そうに食べていた。

出来立ての饅頭はまだ少し熱い位に暖かく、一口食す度に身体の内から前日の政務の疲れが解れていくようだ。

この饅頭の美味しさ。
初めて食べた時以上かもしれない。


「……なんて美味しいんだろう。」

「出来立ては特に美味しいんですよ〜!」
そう言いながら2人分のお茶を淹れる。


……もし彼女が臨時妃に来てくれても、こうやって自分に接してくれるのだろうか……。


│posted at 14:57:28│ コメント 0件
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