2015.12.24(木)

小犬陛下と饅頭屋 6-1

《幼馴染み》



「兄貴!!」
「例の男を見たって惣菜屋の親父さんがッ!!!」

仕事中に突然子分達が店に飛び込んで来た。
几鍔は子分達から話を聞き、急ぎ惣菜屋へと向かった。


「お、何だ几鍔じゃねえか。どうかしたのか?!そんなに慌てて…。」
惣菜屋の旦那は、何時もと違った様子の几鍔に何事かと驚いている。
「慌ててなんてねぇよッ……。
ところでおやっさん、この辺では見掛けねえ怪しい男がいたって本当かッ!?」

もしかしたら夕鈴の店にも行ったかもしれない。

「ああ、メガネかけてる長身の色男だろ?
見かけたんじゃなくて会って話したんだよ。
あんまり怪しい感じはしなかったんだがなぁ。」

……色男??

「いつ会った!?」
「ん?ああ、今朝早くだ。
店を開ける頃に居なくなってたがな。」

そんなに早い時間にウロウロしてたのか!?
夕鈴は店の客だと言っていたが開店する頃に居なくなるってのも怪しいな……。

「饅頭屋の手伝いをしてたから、恋人かと思って話してたんだ。そしたら夕鈴ちゃんに恋人じゃない!って否定されちまってなぁ。」
あっはっは、早とちりだったみたいだなぁと大声で旦那が笑った。
「朝から…店の手伝いィ??
その男は夕鈴一人の店ン中に……上がり込んでたってのかッ!?」

夕鈴には警戒心というモノはないのだろうか。

長身の…色男。
もしかして、夕鈴はその男に騙されそうになってるんじゃないのか!?


「……あンのバカがッ!!」

その几鍔の様子を、旦那は内心ニヤニヤしながら見ていた。
長年の噂通り、几鍔は夕鈴の事を想っているのだろうか。

「なんだ、夕鈴ちゃんはやっぱりおまえの嫁になるのか?」
「ん?そんなんじゃねえよ。何で急にそんな話になンだよ…!」
鬱陶しそうに話す几鍔。
素直にそうだと言わない所を見ると、どうも夕鈴の事を本気で心配しているだけ……にも見える。

なんだかんだと面倒見のいい几鍔が夕鈴を特に大事にしているのはこの下町では有名だ。
しかしそれは、夕鈴の恋愛事情に酷く影響してしまっている。

夕鈴は未だに付き合った男性も居らず、行き遅れになるやもと囁かれつつある。
惣菜屋の旦那は夕鈴が隣の店で1人で働いている姿を見る度、それがずっと気になって仕方なかった。
今朝、店の手伝いをする男を見て、とうとう夕鈴にも恋人が出来るのかと嬉しく思っていたのだ。

「……だったら少しほっといてやれや。
夕鈴ちゃんが行き遅れになりそうな原因の殆どはお前の存在にあるんだからな!
ここらの男共は、みんなお前の嫁になると考えてるから控えてるが、あの娘を好いてる奴は結構居るらしいじゃないか。
それはお前も知ってるんだろう?」


……。

知っている。

あんなお転婆女の何処が良いのか分からないが、くだらない男に良く好かれてしまう様だ。
その度に、牽制し遠ざけてやっていた。
夕鈴を本気で想うのなら、きっと自分に牽制されてもそれに構わず夕鈴に想いを告げるだろうと考えて。

しかし、未だにそんな男は…現れていない。


「……そんな理由でほっとけねぇよ。
あいつは……俺のシマの子供だからな!」

「はは!可愛くねぇなあ、お前。」
「うるせーッ!!」
「オイオイ年長者に対してうるせーはねぇだろ!」
几鍔は旦那にシバかれた。
「いてぇッ!…少しは手加減しろョ。」
「あっはっは!!」



兎に角、後で夕鈴に何も無かったか確認するとして、明日は見送った後に少し付近の見回りでもするかな。

几鍔はシバかれた頭をさすりながら、今後の対策を考えた。

│posted at 15:38:02│ コメント 0件
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