2016.01.08(金)

小犬陛下と饅頭屋 6-5

せっかくだから……と夕鈴からの提案で、少し遠出をする事にした二人。

ちょうど期間中という事で、半年に一度開催しているという焼き物市にやって来た。
広場に臨時で建てられた幾つものテントが、ひしめき合う様に並んでいる。
訪れる人も多く、売り子や交渉をするやり取りなどの声があちらこちらで聞こえ随分と賑わっていた。

「わぁ、凄いね!」
「半年に一度、こうして色々な焼き物を扱う店が、都外からもやって来るんです。
長持ちする良い品を買うなら、ここが一番ですよ!」

丁寧に説明してくれる夕鈴。
その明るい口調につられて李翔の心も更に浮き立つ。


ああ、またそんなに無邪気に笑って…。


……あまり…明るい笑顔を振りまく夕鈴を人目に触れさせたくない……

そんな気持ちを抑えてふと焼き物市の端に目をやれば、端に並んでいるテントの至る所で煙が出ていた。

「あれ?夕鈴、あっちは…食べ物の屋台?」
「ええ、コレを目当てに大勢の人が集まりますから、色々な屋台がたくさん出てるんですよ!」
「ちょっとしたお祭りだね。せっかくだから、あっちも見て回ろう?ね??」
「はい!良いですよ!
お昼ご飯がわりに色々食べてみましょうか。」
「うん、そうしようよ!」
まるで小犬のようにはしゃぐ李翔を見て、夕鈴は思わず笑った。

黙って立っているだけでドキッとするほどカッコいいのに、こうやって喜んでる姿は可愛いのよね〜。

暫く二人で楽しく品揃えや面白い値引き交渉する客などを見て回った。

とある店の前で、李翔は繊細な絵が施してある美しい磁器を見つけた。
品質も中々良さそうだ。

「ねぇ夕鈴。あんな感じのはどうかな?」
「わぁ……素敵ですけど、あれはかなり高価そうですよ。
そもそも品が良すぎですし…。
出来ればお店で気軽に使える感じのがいいんですけど。」
「なるほど。気軽に使えるもの、ね。」

李翔は少し考えた後、辺りを見渡した。
奥の方に、若い女の子からどこかの奥様のような婦人までが楽しそうに買い物をしている屋台が見える。
「夕鈴、じゃああっちの店に行ってみよう?」

そこは犬や猫、兎などの置物も置いてある、可愛らしい品揃えの店だった。
茶碗や皿も単色の絵が少し描かれているだけの物が多いが、それがまたシンプルで使いやすそうだ。
描かれている絵も動物の模様だったりと、店主の趣向が窺える。

李翔はその中で兎の模様が描かれた湯呑を見つけた。
「これなんてどうかな?」
「うわぁ〜可愛い♫
それに使いやすそうですし、これ良いですよ!!」
「うん、それに他の焼き物より少し厚みがあって丈夫そうだね。」
「値段は……と。」
夕鈴は値段が小さく書かれた札を確認する。
「ん!」
「どう?値段も良いの?」
「ええ、この大きさの焼き物ではそこそこの値段です!」

良い品を見つけて喜ぶ夕鈴に、李翔の表情も綻ぶ。

「じゃあコレにしよう。」
そう言った後、李翔は先客と話していたその店の女主人に声を掛けた。
お代を払おうと懐に手を入れた李翔を、慌てて夕鈴が腕を掴み引き止めた。
「待って下さい、李翔さん!」
「ん?」
不思議そうに振り向いた李翔の肩ををグイッと引っ張り無理矢理屈んでもらうと、夕鈴は顔を近付けそっと小声で囁いた。

「……まだお財布は出さないで!」


突然の事に李翔の眼が丸くなる…。

ちょっと甘い言葉を掛けただけでもかなり恥ずかしそうにしていた夕鈴が、耳に唇が触れるほど顔を近付けてくるとは思ってもみなかった。

今までにも魅惑的と言われるような女性達に同じように近付き囁かれた経験は…ある。
いつも、どこか冷めた気持ちでそれを甘んじて受け入れて来た。

だが。
夕鈴の囁き声は優しく心をくすぐる……。

冷めたような感覚はない。
むしろ心地が良い。
ずっと近付いててくれても良い気がする。

李翔は夕鈴の行動に戸惑いつつも、無意識に耳に手を当て先程の愛らしい声と気配を記憶に刻んだ。


そんな李翔の事はそっちのけ状態の、値段交渉で頭が一杯になっている夕鈴。

「じゃあ、ちょっと見てて下さいね!」
夕鈴はそっと李翔から離れ、満面の笑みでそう告げた。

先客とのやり取りが終わった店主が二人の前にやって来た。
「はい、お待たせしました!お客さん、どれをお買い上げで?」
「コレが気になってるんですけど~~…。」


そして……夕鈴と店主との熱い値段交渉(たたかい)が始まった。

│posted at 07:57:48│ コメント 10件
≫コメント 
こっちでは初コメントです(((o(*゚▽゚*)o)))

宣言通りストーキング中!!

夕鈴の値切りっぷりが楽しみです。
きっと陛下のツボなはず!!

また参上しまーす!
まんまるこ│URL│posted at 2016-01-08(Fri)14:10│編集
まんまるこ様こんにちはーー!!

ストーキング&コメありがとうございます(≧∇≦)!!
え!?∑(゚Д゚)ヤバい値切り交渉なんも考えてなかったですw。
次は兄貴登場予定です♫
よろしくお願いします〜〜!
えぐち│URL│posted at 2016-01-08(Fri)16:53│編集
お久しぶりで~す( ´ ▽ ` )ノ

純金湯呑みではなかったのですかΣ(゚Д゚)

耳元で囁く夕鈴に色気のカケラもない件(*´艸`*)ぷぷ

続きも待ってます(`・∀・´)b
RON│URL│posted at 2016-01-08(Fri)21:06│編集
あけましておめでとうございます!!
お久しぶりでっす!!!(#^.^#)

> 純金湯呑みではなかったのですかΣ(゚Д゚)
残念ながら!純金湯呑みは絵でも描こうかと思います♫

> 耳元で囁く夕鈴に色気のカケラもない件(*´艸`*)ぷぷ
『財布出すな』ですからね〜。(・ω・)
でも陛下には言葉よりも夕鈴が側に寄ってきたって事が重要だったのです。w

続き気長に待ってて下さい〜〜!!
コメントありがとうございました(≧∇≦)
えぐち│URL│posted at 2016-01-08(Fri)22:26│編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
-││posted at 2016-01-08(Fri)22:40│編集
ぽんちゃん様

こんばんわ!!(≧∇≦)
コメントありがとうございます!!

基本私が陛下スキーなんで、ちょこちょこお話の中に陛下的小さな幸せを散りばめております♫

残念ながら値引き交渉なんも考えてなかったです( ;´Д`)。
アイデアくださーいw。
勉強出来るんちゃう?は標準装備ですよね☆
関西出身の知人が、もうこれ以上は〜って言い出してからが本番って言ってました。(#^.^#)

李翔さんは多分夕鈴が何やっても胸きゅんしてくれると思います!
気長に待ってて下さいませ〜\(^o^)/
えぐち│URL│posted at 2016-01-09(Sat)02:02│編集
うふふ。夕鈴値引き交渉、これぞ下町娘の本領発揮ですね。
で、李翔さんは益々惹かれるわけですね(o^^o)

兄貴も登場してワイワイガヤガヤの次回編もすごく楽しみです♪
まるねこ│URL│posted at 2016-01-09(Sat)18:58│編集
まるねこ様
コメントありがとうございます!!
値引き交渉やっぱいりますか!?(;´Д`)
あんま深く考えずに書いてちょっと後悔してますw。
でもせっかくなので、李翔さんにもひとつ惚れてもらおうと思います♪
次回は、夕鈴のたたかい、李翔さん胸キュン、兄貴かんかん…の3本です。
えぐち│URL│posted at 2016-01-10(Sun)16:29│編集
あ、値引き交渉は書く予定がなかったなら詳細まではいいと思います。例えば値引き交渉をした夕鈴を見て惚れ直したみたいな陛下目線だけでも十分楽しいと思います(o^^o)

下町のお話は色々楽しいのでのんびり待ってます♪
まるねこ│URL│posted at 2016-01-10(Sun)19:39│編集
まるねこさん!返信遅くなりました~~!!
アドバイスありがとうございます♡
陛下目線もいいですね~(*´ω`)
参考にさせて頂きます♪
ついつい陛下と夕鈴のやり取りを詳しく書きたくなって困ります。
pixiv基準で10話以内で終わる予定でしたが、今はアヤシイですw。
えぐち│URL│posted at 2016-01-12(Tue)12:48│編集
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