2015.11.11(水)

小犬陛下と饅頭屋 1ー4

数日後

【王宮・執務室控えの間】

「…返答は否だった…?」

整った顔立ちの狼陛下の側近、李順は報告書を受け取りながら眉をひそめた。

「はい。第一候補だった汀 夕鈴ですが、何でも王宮で住み込みをする余裕がないとかで…。」
「そうですか。真面目で堅実と評判の様でしたので残念ですね。」
そう言いながら報告書に目を通して行く。

「では、この第二候補の趙 麗華で話しを進めて行くとしましょう。」
「畏まりました。」
頭を垂れたままの内侍が下がって行った。
其れを見届け、もう一度報告書を眺めた。

「…破格の給料なのに、この娘も勿体無い事をしましたね。」

李順はふぅっと溜息をつきながら、右手の指先で眼鏡をかけ直した。



【下町 章安区】

「ああ、本当に勿体無い事をしたわ!!」

夕鈴はまだ父親が持ってきたおいしい仕事とやらを断った事を後悔していた。
しかし、饅頭屋のバイトを途中で放り出す事は出来なかった。

几鍔のオババ様の知人という饅頭屋の女将は、何年も前に旦那さんが亡くなった後、たった一人で饅頭屋を切り盛りしてきたそうだ。

其れなのに、ある日金目当ての暴漢に襲われて腕の骨を折る大怪我を負ってしまった。
店は暫く閉めていたが、ずっと閉めている訳にも行かない。其れでとりあえずバイトでも雇って店を続けられれば…とオババ様に話しが行ったのだ。

そんな事情もあるし実際に会ってみると、口は悪いが厳しいながらも上手く出来ればしっかりと褒めてくれる、気風の良い婦人だった。
饅頭も何回か通ってやっと及第点を貰えたところだ。

そんな時に、もっといいバイトがあるのでやっぱり辞めます…なんて言えない。

「もう、こうなったら饅頭を売って売って売り倒して稼いでやるんだからッ!」
夕鈴は決意も新たにやる気に満ち溢れていた。
│posted at 00:43:00│ コメント 0件
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