2016.01.15(金)

うさサンタゆーりん 2

やがて。


ドサリッ


夕鈴は何処かに運ばれ、置かれた衝撃で目が覚めました。

袋に入れられ、辺りの様子が全く分かりません。
オマケに何やら無理矢理眠らされていたようで、まだ身体が痺れて動けませんでした。

「怖い……どうしよう……このまま狼陛下に無理矢理会わされちゃうのかしら……。」

夕鈴は思わずポロポロと涙をこぼしました。

すると……。急に袋の外が少し明るくなり、誰かの声が聞こえました。

「……なんだ?コレ。」

誰……?

それは先程の二人の声とは違う、若い男の人の声でした。

「……まさか老師の仕業か?
も〜。あの爺さんはホント何考えてるんだか……。」

はぁ、と溜息が聞こえました。
どうやら……あのお爺さんの仲間ではなさそうです。
それによく聞いて見れば、優しそうな柔らかい口調の声でした。

夕鈴は悩みましたが、思い切って助けを求めました。
「ん……。んんうん〜……。」

「……。ナルホドね。」
また男の人の溜息が聞こえた後、ガサガサと音がして袋が開けられました。

「んん〜〜!!」
「!!」

そこには……驚いた表情の犬の青年が居ました。
青年は夕鈴の涙に気が付き、直ぐに猿ぐつわを外してくれました。

「ぷはぁ!!」
「大丈夫?……もしかして、無理矢理連れて来られたのかな?」
「う……はい……。ヒック。」
「そうか。もう大丈夫だよ、兎のサンタさん?」
その優しい言葉に、夕鈴はまたポロポロと泣いてしまいました。
そんな夕鈴を安心させるように、しばらくの間犬の青年が背中を優しく撫でてくれました。

ようやく落ち着いて来た夕鈴。

青年は、夕鈴に細かく話を聞きました。
「そうか、そうやってサンタの君はあの爺さんと少年に無理矢理袋に入れられちゃったんだね……。」
「うう……ッ!コワ…かった…!!」
夕鈴は袋に入れられた時のことを思い出し、また涙が出てきました。

「……よしよし、怖かったよね。
でも、もう大丈夫だから…泣かないで?」
犬の青年はそっと夕鈴を抱きしめて、袖口で涙を拭いてあげました。

それに驚いた夕鈴。
慌てて青年から離れましたが、びっくりしたおかげか涙は止まりました。
それを見て、青年も少しほっとしたようでした。

「助けて頂いて……本当にありがとうございます。
……でもこうやって話を聞いて貰ったら、段々あの二人に腹が立って来ました!!
人が出来ないって言ってるのに聞いてくれもしないで袋詰めにするなんて。酷過ぎます!!!
大体、冷酷非情の狼陛下に会えだなんて…無茶ぶり過ぎです!!」

うさぎサンタ2


ぷりぷり怒りだした夕鈴を見て、青年はクスリと笑いました。
「……とりあえず、君が元気になってよかったよ。]

そう言われて、夕鈴は初めてまともに青年の顔を見ました。
今までそんな事を考える余裕がありませんでしたが、青年はとても整った顔立ちの素敵な美青年。

そんな彼が、綺麗な赤い目を細めて夕鈴を見つめています。
夕鈴は先ほどまでの怒りが吹き飛ぶ程、ドキドキしてきました。

「あ…その…ありがとう。」
そういうと夕鈴は赤くなりながらもにっこり微笑み返しました。


犬の青年は目をまるくしました。

何故なら……夕鈴のように、怒ったり泣いたり裏のない笑顔を見せたりしてくれる女の子を、今まで見たことがなかったからです。

青年が見たことがある女の子は、どんな子も下心が透けた邪な目をしていて……。

でも。
目の前の兎の女の子はとても自然体で、泣き顔も笑顔も可愛くて……。
それに、先ほど抱きしめた時に触れた耳のもふもふ具合も最高に気持ち良かったな…と青年は頬を染めながら思いました。


いつの間にか、青年は夕鈴のことをとても気に入っていました。


「ねえ、そういえば君の名前は?…僕は黎翔。」
「あ、ごめんなさい!私は夕鈴って言います。」
「夕鈴、今日はもう遅いし外に出てまたあの二人に捕まってもいけない。
部屋を用意してあげるから朝までそこに隠れるといいよ。」
「え……、でも、ここには狼陛下がいるんでしょう??」
「うん、まあ、でも・・・」
「私……怖い…。」
よく見ると兎の耳がプルプルと震えています。
「そう……。じゃあ、僕が朝までそばにいてあげるから…。
それならどう??」
「……。」
夕鈴は真っ赤な顔で下を向きながらうなずきました。

それを見た黎翔の垂れた黒い耳と尻尾が、一瞬、スッと立ち上がりパタパタと揺れました。

うさぎサンタ3




まるで……狼のように。




夕鈴は知りませんでした。

国王である冷酷非情の狼陛下は黒狼だということを。

後宮で一晩陛下と共に過ごした娘は、どんな身分の娘であろうと妃として認められ、以後後宮で暮らさなければならないという法があることを。






数年後。

白陽国の後宮には、なぜかクリスマス近くになると姿を現さなくなるという兎のお妃さまが、狼陛下にそれはそれは大事にされ、幸せに暮らしておりました・・・。



めでたしめでたし





うさサンタ4

│posted at 19:36:18│ コメント 0件
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