2016.01.15(金)

陛下、ご褒美を楽しまれる。 3

( 夕鈴目線)


「陛下?」

「えっと、ちょっと、大丈夫じゃないかも。」
陛下は口元を手で覆い、視線を逸らした。

ーー何だか先ほどから無理をしている気もするし。

「ええ?!やっぱりっ!
よっぽどお仕事ぎっちりみっちりだったんですね。どうしましょう、何か私に出来ませんかね…。」

「ごめんごめん。本当は大丈夫だよ。」
そう言う陛下はやっぱり何時もと様子が違う。顔色もかなり悪い。
「え?でもお顔の色も…。」
「ちょっと寝不足なだけだから。ね?」

ーー寝不足なら、少しでも寝た方が良いわよね?

「では、此方で少しお休みされて行ってはいかがですか?
少しでも横になると、疲れが取れて身体が軽くなりますから。」
「うーん、でもここはこの長椅子しか無いし。
僕、夕鈴を立ちっぱなしにはさせたくないな。」

ーー陛下はこんな時にも私に優しい。

見るからに疲れているのに自分を気遣ってくれる陛下をどうにか休ませてあげたい。

「え〜…私、立ってる事位どうって事ないですよ?ではお部屋の方に行かれ「ダメ。僕1人で此処で休むのも嫌。」
言葉を遮り提案を拒否してくる。
一見我儘に見えるけど、多分私や私の作ったお菓子を想っての事なのだと思う。

「何でですか!お疲れなんですから、ゆっくり休んで下さればいいのに。」
もうっ!と言いながら顔を背けた。

ーー何でお役に立ちたいと思う気持ちを分かってくれないのかしら!

ここには長椅子が一つ。陛下には何とかゆっくり横になって貰いたい。

その時、ふと青慎と遠出した時の事を思い出した。昔は時々2人で山などに遊びに行き、疲れた青慎を休ませる為に良く原っぱに座って膝枕してあげていたっけ。髪を撫でてやるとふふっと微笑む、可愛い青慎の寝顔が思い浮かぶ。


ーーそうだわ!膝枕なら!!


「なに?」

「では陛下!
膝枕なら、陛下がお休み出来て私も座ったままでいられて、2人の意見が通ります!
いかがですか?」

ーーそうよ、これで解決だわね!

陛下を休ませる事が出来そうで嬉しい。

けれど陛下は数回瞬きをすると、少しの間私を見つめたと思ったら、遠くの空を見上げてしまって言葉を返しては来なかった。

「…陛下?」

膝枕は不敬に当たるのだろうか。…それとも子供みたいで恥ずかしいのだろうか。


「ーねぇ、夕鈴。」
ゆっくりと私の目を見て諭す様に話し出す。

「今日は、久々に夕鈴とこうやって一緒に居られるから。」

陛下は自分の手を私の手に重ねてきた。
ドキッとしてしまって、思わず手に力が入った。

「…それだけで私は癒され、満たされている。」
「なっ!!」
突然の狼陛下に驚いて身体が強張る。

「膝枕…は次の機会にじっくりと堪能させて貰おう。」

そう言いながら陛下は私の頬をそっと指先で撫でてきた。色気たっぷりのその低い声と仕草に、もう、恥ずかしいやらドキドキするやらで頭がショートしそうだ。


ーーー私…、この人の頭を膝に置くの?この人の髪の毛を…撫でるの!?……無理じゃない?
だって、何だか…危険な感じがする…!!


「へーかっっ!!今は演技いりませんっ!」
「ごめんごめん。
では、我が国1番のお茶菓子を頂こうかな。」
また何もかもを魅了する様な瞳で見つめてくる。この人は何故こんなにも演技が上手なのか不思議でしょうがない。

「ま、また演技入ってますッ!
もういいですから、早く食べて下さい!!」


ーー膝枕は絶対止めておこう…。


麗らかなお茶の時間。
お菓子を美味しいと言って貰えるだけで、こんなにも嬉しい。

それだけで、今日も充分です。



今日も、ね!

│posted at 20:03:15│ コメント 0件
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