2016.01.15(金)

李順の謀 ーその後ー

【二次創作SS】【臨時妃期】【黎翔×夕鈴】




それは、ある日の夕方。

「李順さん、どうしたんですか!?」
夕鈴が黎翔に頼まれていたお茶を執務室に持って行くと、顔色の悪い李順が倒れ込む様に長椅子に身体を預けていた。
「…ご心配無く。」
力ない返事をしながら怠そうに身体を起こす。

そんな李順の代わりに黎翔が話し出した。
「李順は仕事以外の案件が多過ぎて、ここの所あまり休めてないんだよ。」
「仕事以外…ですか?」
「縁談が殺到してるんだってさ。」
「…陛下!」
茶化す黎翔に突っ込みをいれるのも少し辛そうだ。

「ああ!もしかして、噂になったからですか?
あの例の女官さんを助けたって話!
昨日紅珠まで話してましたから、きっと貴族の方々の間でも広まってるんじゃないですか?」
「…そんなに噂になってるんですか…。」
李順の顔色が更に悪くなった気がする。

「李順も臨時花嫁を雇えば良いのでは?」
くつくつと笑いながら面白がる黎翔に、李順が小言を言い始めた。
「陛下!大体、貴方が女官を怯えさせたりするからいけないんですよっ!?
陛下の所為で、仕方なく手助けする羽目になったんですからね!」
「えーっ、僕が悪いの?」
うんうん、と頷きながら夕鈴も李順に同調する。
「…狼陛下は本当に怖いんですよ?
無闇に女官さんを咎めないで下さい!可哀想です。」
「夕鈴!僕は話しを聞いただけだよ?」

「聞いただけ、じゃないでしょう?!
なんで女官を助けただけでこんなにも縁談話が増えるのやら…。
もうとにかく全部陛下の所為ですッ!!」
その言葉に、夕鈴はふっと笑うと李順の方に顔を向ける。
「でも、李順さん。
縁談が増えたのは李順さんの所為もあるかも。」

「は?!何故です?」

「うーん、その、説明が難しいんですが…。
女官の方を抱き上げて運んだんでしょう?
困っている時、李順さんにお姫様抱っこされて助けられたりしたら、女の子ならグッと来るっというか…。ときめくというか…。
紅珠が言うには『胸きゅん』という状況だそうですけど。
…まあ、そういう事になりますから、女性に人気が出るのは当然なんですよ。ですから…。」
「は、はあ。」

ーー分からない事もない、かも知れない?

戸惑う李順を余所に、黎翔は急に夕鈴に詰め寄った。
「ねぇ!ちょっと待ってゆーりん!
もしかしてゆーりんもそういう状況になったらグッと来るのッ!?
ときめいたりするの?どうなのッ!?」

真顔で捲し立てる黎翔に、若干押されながら答える。
「はぁ、多分。そうなる気はします。」
その言葉に、ぱああっと笑顔になる。
尻尾がぶんぶん揺れているのが見えそうだ。

そして、少し照れた様子で質問を続ける。
「…じゃあ、僕がお姫様抱っこしてる時とか………『胸きゅん』なの?」

そう言った途端、李順の顔が蒼白になり夕鈴の顔は真赤になる。
だが、夕鈴の返事は黎翔が期待したものではなかった。

「えぇ!?
いやー、陛下のは只々恥ずかしいだけですよ!
それが李順さんなら…多分…という事、です。」

ーーえ?

「李順なら…?」
「はい。」

ーー…李順なら…??

「じゃあ、…方淵なら…?」
「…後が怖いですねソレ。」

「水月なら?」
「非常に申し訳ないです。」

「浩大。」
「ありがとう〜って感じですね。」

「李順。」
「え?だからドキッとするんじゃないんですかね?」
「して欲しくもありませんがね。」
さりげなく李順が突っ込みを入れる。


黎翔は、おもむろに俯いたかと思うと、いきなり夕鈴の両肩を掴んだ。
夕鈴が驚いて息を飲む音が部屋に響く。


「夕鈴、李順の事が……好きなのか?」

微かに震えるているような、低く冷たいその声。

其処にいるのは…狼陛下。


けれど、想定外の言葉に、李順も夕鈴も声を荒げた。
「「はぁぁあ??」」

狼王が顔を上げ、怒気を含んだ眼で李順を射抜く様に睨みつける。

「……李順ッ!!」

「「何でそうなるんですか〜ッ!!」」

ぴったりと2人の声がハモった。



バシバシッと黎翔の手を振りほどき、夕鈴が怒り出す。

「もうッ!急に狼陛下にならないで下さいッ!!
なんていうか…好きとかは関係ないんです!
普段厳しい感じの李順さんだからこそ、ふと見せる優しさに心動かされる、というものなんだそうですッ!!
紅珠が言うには、…確か…『ギャップもえ』という状態だそうです!」

「…何ですかそれ。」
李順はもう気力が尽きたのか投げやりになっている。

「あ、ごめんね…。そうだったの?」
夕鈴の言葉にホッとするも、何だかまだ腑に落ちない。
「…でも僕も厳しくお仕事してるのに。
夕鈴にしか優しくしてないのに。
どう違うの?」

李順に出来て、自分に出来ない事が有るというのは捨て置けない。

ーーそれが夕鈴をときめかせる事に繋がるものなら尚更だ。

「うーん、何なんでしょうね。
結局の所キャラが違うから、じゃないですか?」
「…では私はどういうキャラだから駄目なのだ?」
どうしても納得出来ずに問い詰めてしまう。
「え…ええと、…。」

少し考え込んだ後、覚悟を決めた夕鈴が黎翔に向き直る。

「へーかは…元々女誑しな感じですから、何をしても女誑しに見えちゃうだけ…なキャラ、だから?」

「ゆーりん…。」

ーーそれじゃあ自分がどんな事をしても、夕鈴は女誑しだなと思うだけで、ときめいてはくれないの…?

小犬陛下はガックリと肩を落とした。







それから。

数日後、執務室にて。


「李順。あれから色々考えたんだが…。
お前に1つだけ言っておく事がある。」
「はぁ、何の話ですか急に。」

「この先例え何があっても、お前が夕鈴を抱き上げる事は許さぬ。
…何があっても、だ!」

「……まだ気にしてたんですか?」

そしてまた李順の溜息が聞こえた。

│posted at 20:07:49│ コメント 0件
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