2016.01.15(金)

李順の謀 《謀の後始末》

【二次創作SS】【キャラ崩壊気味注意】【臨時妃期】




「夕鈴、来たよ。」


黎翔は部屋に入ると、緊張した面持ちで椅子に腰掛けている夕鈴に声をかけた。
そして黎翔の背後から、側近である李順が現われる。

「何ですか、急に呼び出したりして…。私も陛下も貴女みたいに暇ではないんですよ?!」

後宮の立ち入り禁止区域へ急に呼び出された李順は、ブツブツと小言を言いながら部屋に入って来た。

「突然ごめんなさい李順さん…。ちょっと見て欲しい物があって。」
夕鈴は握りしめていた巻物を卓上に置いた。
「これなんですけど…!」
李順はそれを手に取り、くるくると回しながら表装などをあらためて、また夕鈴に手渡した。

「ふむ、上質の紙材ですね。更に仕立てに使われた織物も中々に良い物です。
ですが、何故こんな物を貴方が?」
「それ、私のではなくて…、紅珠の巻物なんです…。」
「ああ、例の貴族の子女に人気という物語の…。
で、それが何なんですか?」

李順の問い掛けに、夕鈴は気まずそうな表情になる。

「それ、今迄のとは少し違ってるみたいで、ええと、言いにくいんですが、その…」
「何ですハッキリお言いなさいっ!」

「それ……例の李順さんの話を元にした物語みたいなんですっ!!」

「はいィ?!」

思ってもいなかった事に、思わず言葉に詰まる。

「以前紅珠が、女官さんを助けた話にえらく感動してるな〜って思ってたんですが、今日それを私にって持ってきて…。」

李順は、恐ろしほど嫌な予感がした。


「……ちょっと、いいですか?」

「は、はい。どうぞ。」

李順は夕鈴から巻物を受け取ると、スルスルと広げて内容を確認した。


そこには……。
『とある王と妃の愛の物語』のスピンオフとして王宮で華々しく活躍する美形の側近の話が。



王の片腕として厳しく政務の補佐をする眼鏡をかけた見目麗しい側近。
彼は極めてクールな性格である。
時には王に堂々と意見する強さと智力も兼ね備えている。
しかし、そんな彼には困っている女官を助ける心優しい紳士な一面も……。
その仕草は優雅で洗練されており、まるで王族のよう。
そう、実は彼は隣国の王子だった…。



「……何ですかこれはッ!!」

李順の顔は酷く蒼ざめている…。

「だから、紅珠の書いた物語です…。」
「これ、間違いなく李順がモデルだよね。
きっと王宮に勤めてる者なら誰もがそう思うんじゃないかな?」


…こ、こんなものを世に出されたら…。


「では、コレは……陛下に回収された事にして頂けますか?
こんな物語が出回ったり…なんて考えるだけで恐ろしいですよっ!
夕鈴殿は、氾家の御息女に『この話は世に出さぬ様に』とお話し下さい…。」

それを聞いて夕鈴は更に気まずそうな表情になった。
「あのですね。…その物語、もう既にかなり出回ってるみたいです…。」

「ええっ!?」

「その物語はもう国内に出回ってて、それがあまりに反響が大きいので諸外国の貴族の方々から幾つも申し出があったそうで。
今ここにある巻物は、そんな流れで今度蒼玉国で出版される事になった作品の見本品だそうです…。」

「な、なんて事…。」
李順はどうしたものかと考えを巡らせた。
しかし動揺が大きく上手く考えがまとまらない。

「だから、もう出回るのを止めるのは無理なんじゃないかなぁ?」
すっかり他人事、といった黎翔の言葉にイラっとしてしまう。


…それじゃあ最近縁談話が更に増えていたのは、まさかコレが出回っていたから……?
だとすると…このまま諸外国でコレが出版されたりしたら、今まで以上の事態に…??

そうなったら…、もうやってられないっ!!

そもそも、こうなったのは女官を動けなくなるほど怖がらせた陛下の所為でもあるのに……。

…そうか、これは陛下の所為なのだ。
だから陛下に…責任を取って貰えば良いのか……!!


李順はキッと黎翔を見上げた。

「だったら陛下……夕鈴殿を…今すぐ私に御下賜下さい!」
「なっ…李順ッ!!?急に…どうしたっ!?
やはりお前…夕鈴の事をっ!?許さんぞ……。」
黎翔は長剣に手をかける…。
「何考えてるんですかっ!
このままじゃ私が持たないんですっ!!
こうなったら臨時嫁でも何でも今すぐ雇って、早くこの問題を終わらせたいんですよっ!」
「お前こそ何考えてるんだっ!
夕鈴は私の唯一の妃だ。下賜などするかっ!!
臨時嫁が欲しかったら自分で探して来い…っ!!!」
そう言うと黎翔は素早く夕鈴を隠す様に抱きかかえた。
案の定夕鈴は、陛下!急にびっくりするじゃないですかッ!!と顔を真っ赤にして怒り出す。

「今すぐ雇える者なんて…。」
李順はがっくりと肩を落とした。

憐れにも見えるその姿。

夕鈴は紅珠の話を聞いていたにも関わらず止められなかった負い目から、何だか居た堪れない気持ちになった。


李順さん……。

普段ならこんなに取り乱したりしない人なのに。
これほど追い詰められているなんて、縁談を断り続けるのがそんなにも大変なのね…。
可哀想に…。


「…分かりました!
李順さんにはお世話になってますし、私で良かったら臨時嫁やりますっ!」
「……夕鈴殿。」

黎翔はその言葉に驚き、夕鈴を降ろして強引に自分に向き合わせた。

「ゆーりん!?
待って、意味分かって言ってんのッ!?
下賜って事になっちゃうんだよ?」
「陛下、『貸し』なんて人を物みたいに言わないで下さい。
とにかく一度李順さんの臨時嫁やってみます!
だから臨時妃は少しお休みしますね。」

「ねぇっ!!絶対意味分かってないでしょ!?
ダメだよ!ゆーりん!」

「大丈夫ですよ、すぐに帰って来ますから…。」


「違うってばゆーりんッ!!」



その後、黎翔の迅速な対応とコレでもかと言うほどの圧力によって、物語に出てくる側近の設定を官吏に…眼鏡設定を無くす…等、大幅な変更の後に出版される事になる。

そして、その報告を受けてようやく黎翔は夕鈴の説得に成功したのだった。





それから一月後。






何故か、最近になって諸外国からも縁談が来るようになった……。




何故なんだっ!!!




方淵は次から次へと湧いてくる縁談に頭を抱えたという。
│posted at 20:12:25│ コメント 0件
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