2016.03.14(月)

悩み事 1

【二次創作SS】【妓館の騒動後暫く経ってからの完全妄想】【水月と方淵のやり取りメイン】【糖度zero】



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『悩み事』




今でも時々思い出す。

突然王宮から居なくなったお妃が、これまた突然自分の目の前に現れた時の事を。

心底驚いたし、このお妃の所為で陛下はずっと苦しんでおられるのだと思うと怒りが湧いた。だから、それ迄ずっと心に留めていた事を思う存分ぶち撒けた。

そして、ほんの少し。
ほんの少しだけ、ほっとしたのだ。

彼女の笑顔に。

目の前のお妃は着ている物は違えど前と変わらない、健やかな姿だったことに。

何時もの飾らない彼女の気持ちが、とても自然に受け入れられた。
何処にいてもどんな姿でも、このお妃は変わらないのだ。

あの時、ふと、そう思った。

けれど。




「君はどう思う?方淵。」

少し離れた所で座っている水月に話しかけられた。





昼からの会議の間で行われる協議まで、まだ時間がある。

それ迄近くの廊下にある長椅子で待とうとしたら、先客が居た。
呑気な顔で呑気な生き方を貫いている同僚…氾水月だ。

毎度のやる気の無さにイライラさせられるが、恐らく真面目に仕事をやれば自分よりも出来る男なのだ。それがまた一段と腹立たしい。
隣に座るのも癪なので、仕方なく欄干にもたれ掛かって中庭を眺めていた。
そうしていると徐に水月が話し掛けてきたのだ。

君はどう思う、と。

「…どう、とは?」
長椅子に座る水月を見つめた。
「お妃様の事、陛下の事、とかね。」
「…。」
この男には常に考えている事を見透かされているようで、嫌な気持ちになる。
「 気になる事があるんだろう?」
何もかも見通してしまいそうな水月の瞳から視線をはずす。

そう、最近気になっているのだ。あの変わらないと思っていたお妃の事が。

「何故…。」
「何故か分かるんだよ。
私も気になっていたから、かな。」
「…そうか。」
方淵は中庭を見ながら独り言の様に呟いた。
そして、ゆっくりと、後に続く言葉を探した。

どう言えば良いのか…。

「お妃は以前とは、その…何処かが変わった、な。
…何処が、とは…まあ、言えないが。」

水月は言いにくそうにしている方淵を見て、この男らしい答え方だなと思い、可笑しくなった。
方淵はそういう方面に弱いというか、奥手というか…。
しかし、そんな男でも気が付いていたのだ……。

お妃様が今迄とは違う、という事を。

あの、何に対してでも一所懸命なお優しい方が、漸く本当の狼陛下の花嫁になられたのだ。


他の官吏達は以前と違うなどと思う事はないだろう。
だが、妹の邸宅に滞在していた時からどの官吏より近くで接して来た自分達。

妓館の騒動前も身近にいたのだ。


そんな自分達だからこそ……。


お妃様の変化に気が付いたのだと思う。



「やっぱり君もそれに気が付いていたんだね。」
水月は微笑みながら方淵を見た。
「いつ気が付いたんだい?」
「…。」

そう言われて、方淵は思い出してみた。
お妃に違和感を、何かが…違うと感じたのはいつだった…?

「後宮から滅多に出て来なくなった。…その事に気が付いた後、暫くして…久々に回廊ですれ違った時に…だ。」
「そうだね。以前は良くお出ましになられていたから不思議に思うよね。その後か…。」
「…ん?貴様は随分と前から気が付いていた様な口振りだな。」
「…ふふ。そうかな。」
なんとも気になる言い方をするものだ。

「ふん。まあ、今の状態が本来の後宮の在り方なんだろ。…寧ろ仕事の邪魔が入らず良い事だ。あのお妃も今迄とは違うからな。」
「お妃様は別に以前から仕事の邪魔などしてないだろう?君が睨むから、丁寧にお答えしてくれていたんじゃないか。」
クスクスと笑う水月を睨んでやったが、全く気が付かない様だ。…気が付かないフリをしているだけかもしれないが。

「本来の後宮…か。成る程、そうだね。後宮からお出ましになられないのは、やはり陛下の御意向もあるのだろうね。あれ程長い間…我慢なされていたのだから。」

当然と言えば当然かな?と言いながら意味ありげに眼を細めた。

「漸く陛下が本気になられた様で、私も何だか安心したよ。ねぇ、君も…。」
そこまで話して、どんどん方淵の顔付きが険しくなってきたのに気が付いた。

おや、…何か気に触る事が…?


「……水月、陛下はお妃の所為で何かを我慢なさっていたのか?!」

「…え?」

│posted at 11:53:12│ コメント 0件
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